2010年6月16日水曜日

「かずや」

子供の頃、父親の仕事の関係で私は3年周期くらい?で、

幼稚園から小学校までの期間、転校を繰り返していた。

そのせいか特に友達に対しての何とやらもなく、仲の良い友人もいなかった。

人と付き合うのが苦手というか、そんなに好きではなかった。

その感じは現在も抜け切れずに持ち合わせているのだが・・・。


何回目の転校か定かではないけど、地元に戻ってきたときのこと。

同じクラスになった、なぜかいつも私にまとわりついてくる男子がいた。

名前は「かずや」。こいつのことは苗字も覚えてる。確か2年か3年の頃のはず。

とにかく目が合えば追いかけてきて、捕まれば思いっきり抱きついてきて

挙句にキス?のようなことを異常なまでにしてくるやつだった。

話だけ聞けばその子は私のことが好きだったんじゃない?

と言うかもしれないが、ちょっとちがう。

そして、子供にありがちな可愛い恋愛、そんな感じでも全くなかった。

あれは粘着。そう、粘着、いや執着、とりあえずそんな言葉がピッタリ。

不思議なことに私は「かずや」が嫌いではなかった。が、好きでもなかった。

その異常行為がとにかく嫌で、学校に行く事すら苦痛を感じていた。


仲の良い友達もほぼいない私は休憩時間も一人が多く、そんなとき

「かずや」に気づかれると(同じクラスなので当然毎日)回避のしようがない。

あいつは赤い布をみつけた牛のごとく突進してくる。またか・・・恐怖すら感じてた私は

ある日女子トイレまで全速力で逃げた。が、こいつ学年でも1、2番くらいの瞬足。

足が速いからドアを閉める前に捕まってしまった。あわわわわ・・・

もしかして殴られるのかな・・・それとも閉じ込められるのかな・・・と思ってたら

「かずや」は私の逃げ込もうとしてたトイレの個室に滑り込んできてドアを閉めた。

えぇぇえ・・・何する気だこいつ・・・こんな狭いとこで二人きりだったら・・・
(変な想像しないでください、小学生です)。

単純に私は先生にも誰にも見られてないのでコレ幸いといわんばかりに

ボコボコに殴られて意地悪されると思い,どうしようかと縮こまっていました。

「かずや」は私を角に追いやり、追っかけっこ?の延長っぽく、とりあえず

「獲物」が逃げないように押さえ込んでる、といった感じで私は捕獲された状態。

特に何かをされるわけでもなく、休憩時間が終わるまで捕獲状態が続き、

始業のチャイムが鳴ったとき「かずや」が言った。

「おまえはおれのなんだ。どっかにいくな」(地元の方言で

・・・おまえの?なぜ?

この台詞を今の年齢で言われたら、また違った意味もあり、

あの言葉の裏には・・・なんて浮かれて考え込んだり・・・(ぐふふ)

んで、違う感情ももしかしたら生まれでたのではないかと。

ただ・・・ここで勘違いしてほしくないのですが、中学生やそれ以上の年代なら

また言葉の裏に隠されたものがあったかもしれないシチュエーションですが

あくまでも小学生。しかも低学年です。言葉の中の思いや場の状況が違います。

単純に私がペットやおもちゃかなんかのような感覚だろうと。


それから3年が過ぎ、私はまた転校することに。

家の近所を散歩してると前方から「かずや」が歩いてきた。もちろん偶然。

「あ・・・かずやだ・・・」と一瞬焦ってとっさ的に身構えたが、

「かずや」はすぐに私に気づいたものの、

なぜか一切こちらを見ることなく、そのまま通り過ぎていった。

「・・・・・・」

何事もなくてホッとしたと同時に、何故か妙な孤独感のようなものも感じた。

そして私はそのまま転校。



今考えると、「かずや」にとって私は、気に入った遊びの一つだったのだと思います。

お気に入りのマンガ、お気に入りの靴、お気に入りのボールに、お気に入りの友達、

そしてお気に入りの「私」



今でも極たまに思い出す「かずや」。淡い思い出には間違いないんだけど、

やっぱりあの頃は「かずや」を「好き」という感覚は生まれてなかったです。

まぁ好きとかの感覚もなんだかわからない子供だったからねぇ。

一体どんな感じの大人になってるんだろう。

再会したら何を話すんだろう。

でも、おそらく彼は私のことなんか覚えてないけどね(笑)

こうやって文字におこしてみると、かなり古い記憶も新鮮に感じます。

懐かしく会いたい気持ちにも拍車がかかるってもんですね。